旅で出会った不思議なこと、おもしろい事件、悲しいこと等など・・・つれづれなるままに、書き綴り候・・・。
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レポートNo.16 ドイツで泊まった船上ホテル
Report : kuu

今年の3月に仕事でハノーバーへ行ってきました。世界最大級の見本市の開催時期で、中心街のホテルは一年前から予約されているとかで、出発前のホテル探しはかなり難航しました。

ようやく見つけたのが、街のはずれにあるクルージングホテル。船のキャビンを宿泊客用に改装したばかりという、できたてのホテルでした。クルージングは経験済みですが、川岸に繋がった船に泊まるのは初めてで、なんだか不思議な感じがしました。

パリから出発飛行機に乗る直前に、アドレス確認のためにホテルへ電話を入れました。ホテルの人は優しそうな感じでしたが、肝心なアドレスについては「ここは川の上だから住所がないのよ。○×橋までタクシーで来てください。そこから川に向かって土手を降りれば、いくつかある船のうちの一つです」とのこと。ちょっと驚きと不安を抱き、ドイツへと向かったのでした。

ハノーバーに着いたのが、夜の10時半ごろ。とりあえずタクシーの運転手さんに橋の名前を告げると、彼も少し変な顔をしていました。ますます不安になる私でしたが、目的の橋から川を見下ろすと、言われたとおりに船が数隻見えたので、やっと安心できました。

足場のしっかりしていない土手を降りると、一隻目が私の予約した船でした。ドイツ語はもちろん英語、仏語、イタリア語、スペイン語が得意なオーナー夫妻が、二人だけで中むつまじく経営しているクルージングホテル。夏には実際にヨーロッパ一周ツアーを組む予定があるそうです。お客さんの希望によってはアフリカ辺りまで行きたいな、なんて奥さんは言っていました。旅行好きの二人の夢を乗せた船だそうです。楽しそうにツアー用のパンフレットなどを広げる二人を見ながら、私の宿泊期間は常時停泊なことが、とても残念に感じました。

部屋はまだ新しいキャビンで、ベッドが二つ。大理石っぽいインテリアがリッチな感じでした。ただ、電話が内線のみしか繋がらないというのが困った点。インターネット接続は、奥さんのケータイを使ってメールでの送受信のみサービスしてくれました。

朝は川岸はとても冷えて、滞在中に雪が降ったりもしました。早起きして甲板に出て眺める、川の緩やかな流れと周囲を覆い隠すほどの濃い朝靄。川越に広がる深い緑の森。体の芯から冷えているはずなのに、それも感じないほど、日常とかけ離れた景色に圧倒されていました。

夜はモーターの音が響くし、他の船がすれ違うと思った以上に大揺れしました。オーナー夫妻は、船が泊まっている時の方が、移動中より揺れが気になるけど、そのうち慣れるわよ、とお気楽ムードで、なんだかこっちまでつられて和んでしまいました。ビュッフェ形式の朝食をとる時には、他の宿泊客とも友達になって「ほんと、今度はこの船でみんなでクルージングしたいねー」なんて話で盛り上がりました。アットホームな動かない船での宿泊は楽しい体験でした。

つれづれなるままに旅日記

No.040


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